住基ネット差し止めへ

 国民が、主権者として、国家による管理の客体とされないよう、全国で12の裁判所、300名を超える原告がたたかっています。

 福岡訴訟は、2004年12月に、研究者の黒田充氏と、住基ネット稼働時の市役所の担当職員の方の証人尋問を行いました。これらによって、住基ネットには、国民に加入を強制するほどの利便性がないことや、システム自体が情報分散管理によるプライバシー保護や、地方分権のための仕組みとは全く逆の方向性を持つものであり、情報の大量移動による漏えいの危険等が飛躍的に高まることが明らかにされています。

 2005年2月15日には、憲法の石村善治教授外4名の原告本人尋問が行われました。
 石村教授は、OECD8原則やEU指令など、国際的な標準となるプライバシー権・自己情報コントロール権の保護態様や、ご専門である、ドイツにおけるデータ保護法等と国内法を比較し、その不十分性を指摘されました。
 我が国では、住民基本台帳法改正時に、政府公約であるのみならず、附則において法的義務であることが明確にされた「所要の措置」としての個人情報保護法すら制定されないまま住基ネットの稼働が開始したこと、その後成立した行政機関個人情報保護法が、国民のプライバシー権、自己情報コントロール権に配慮したものでなく、国際的水準とかけ離れていることを明らかにされました。
 その他の、4名の原告の方々も、それぞれの立場から、個人識別情報の重要性、人的・技術的漏えいの危険性、行政機関が国民の人権や自由に配慮していない現状などを訴えられました。

 現在の全国の訴訟の争点は、原告らが住基ネットを離脱し、国家からの管理を拒否することによって、ほかの国民が困るのか、あるいは、国の業務に重大な支障をきたすことがあるのか、という点です。

 杉並区や国立市が離脱し、横浜が希望しないものの離脱を認めている現状で、国はこのような離脱による支障について特段の説明を行っていません。

 誰にも迷惑をかけることがないのであれば、個人の自由は最大限に保障されるというのが、憲法の立場です。権利に伴う義務とは、他者の権利を侵害しない義務以上のものは存在しないからです。

 このような観点から、原告らが住基ネットから離脱することは、当然に認められるべきです。