金沢判決は、離脱を認めました。

 2005年5月30日午前10:00、金沢地方裁判所は、原告ら28名の、住基ネットからの離脱を認める画期的な勝訴判決を下しました。
 金沢判決の概要は以下の通りです。
 ①憲法13条で保護されるプライバシー権には、大量の情報が容易に漏えいしうるなどのデジタル情報の特性からすると、自己に関する情報の他者への開示の可否及び利用、提供の可否を自分で決める権利、すなわち自己情報をコントロールする権利を含むものと解するべきである。
 ②住民票コードは、秘密にすべき必要性の高い情報である。
 ③本人確認情報の利用形態は、提供先が拡大されることが予想され、住民票コードによる検索の容易なデータベースの作成や名寄せの危険性が飛躍的に高まった。行政機関が保有する個人についての膨大な情報が名寄せされると、住民個々人が行政機関の前で丸裸にされるがごとき状態になる。住民がそのように認識すると、住民一人一人に萎縮効果が働き、個人の人格的自律が脅かされる結果となる。
 ④②、③から、同意しない住民へのプライバシー侵害には、これを犠牲にしてもなお達成すべき高度の必要性があることが必要である。
 ⑤住民票の広域交付、転出入手続きの簡素化のメリットはさしたるものではない。電子政府、電子自治体のためには、公的個人認証が必要不可欠ではなく、しかも、公的個人認証にも、住基ネットは不可欠ではない。
 しかも、これらのうち、住民の利便という側面については、これを放棄し、プライバシー保護を選択する住民との関係では正当な行政目的たり得ない。
 ⑥⑤のうち、行政事務の効率化に関して、国の試算は、国民の半数が住基カードを所持することを前提としたもので、信頼できない。
 ⑦住基ネットには、住民のプライバシー侵害を犠牲にしてもなお達成すべき高度の必要性がないから、同意しない住民の参加を強制することは憲法13条に反する。

 私は、この判決言い渡しに立ち会うとともに、全国弁護団として、午後3時からの総務省への住基ネットの運用停止の要請を行いました。
 移動中に読んだ判決全文は、たいへん緻密な論理が展開されており、裁判官が、原告らの訴えを真摯に受け止め、一生懸命向き合おうとした姿が浮かびました。
 この画期的な判決が生かされるよう、また、全国に波及するよう、私たちも改めて頑張っていきたいと思います。
(なお、5月31日には、名古屋で、原告敗訴の判決が出されました。この判決は、本文で88頁もある金沢判決と比べ、全体でわずか28頁、裁判所の判断部分は、わずか7頁しかありません。証拠調べも行わず、最終準備書面の提出や結審弁論も認めず突然結審するなど、公正さにも疑問があります。)