住基ネット差し止め訴訟福岡高裁判決

午後1時30分から、福岡高裁第2民事部において、住基ネット差し止め福岡訴訟の控訴審判決の言い渡しが行われました。

 判決の内容は以下の通りでした。

1 自己情報コントロール権については言及せず、京都府学連事件判決を引用して、憲法13条が「個人の私生活上の自由の1つとして、何人も、個人に関する情報をみだりに第三者に開示または公表されない自由を有するものと解される。」とする。

 氏名、生年月日、性別、住所の4情報は、秘匿性が高いと言えない。住民票コードも、限定された目的に利用される限り秘匿性の程度は高いと言えない。

 住基ネットは、住民サービスの向上及び行政事務の効率化という行政目的達成を目的としていることから、公共の福祉による合理的な制限である。

2 「住基ネットのシステム上の欠陥等により外部から不当にアクセスされるなどして本人確認情報が容易に漏洩する具体的な危険がある場合には」離脱が認められうる。

 また、データマッチングにより、個人についてのデータベースを構築する具体的な危険がある場合には、離脱が認められうる。

3 福岡県内の自治体のセキュリティに関し、「担当職員が総務省セキュリティ基準ないし総務省策定の情報セキュリティポリシーを十分に把握していない例がある。」と言う問題点がある。

 しかし、「住基ネットのシステム上の欠陥等により外部から不当にアクセスされるなどして本人確認情報が容易に漏洩する具体的な危険があると認めることはできない。」

4 法令の定めなどから、データマッチングの具体的危険はない。

 福岡高裁では、セキュリティーに関する主張立証を強く行いました。またこの点は、本年3月6日に出された最高裁判決でも、原審の大阪高裁において十分証拠が提出されていない部分でした。

 高裁の審理では、調査嘱託により、住基ネットのプライバシーポリシーがないと回答した職員がいて、証人尋問では「勘違いでした。ありました。」と証言しました。国のセキュリティに関する主張は、セキュリティ基準を定めていること、各自治体がこれを遵守していることでしたが、セキュリティの憲法とも言えるプライバシーポリシー(プライバシー指針)すらあるかどうか分からない自治体が、適切にセキュリティを守っているとはおよそ考えられません。

 判決は、事実の問題点は認定しましたが、普通の裁判所が判断基準とする「漏洩の具体的危険の有無」ではなく、「容易に漏洩する具体的な危険」がないとして、一方的にハードルを上げ、安全としました。

 目の前で示されたずさんな自治体の実態に目をつぶった判決と言わざるを得ません。

 住民らは、速やかに上告します。