古賀市一般廃棄物焼却場問題

1 和解が成立しました。

 2006年9月6日、福岡地方裁判所において、古賀清掃工場を運営する玄界環境組合との間で、和解が成立しました。
 その主な内容は、「被告は、一定期間(2週間ないし4週間以上を基準とする。)における排ガス中のダイオキシン類排出量を採取する装置がJIS規格などの国の法的基準で認められたときは、上記装置を導入することを真摯に検討し、その結果、導入が被告において決定され、かつ、必要な財政的措置がとられたときは、上記装置を導入する。」というものです。
 現在、廃棄物処理法では、大型焼却炉におけるダイオキシン類の測定を最低年1回しか義務づけていないため、その検査の際にデータがとられるわずか4時間程度の間の排出濃度さえ守っていれば、常時守っているという扱いにされています。
 しかしながら、検査がなされている以外の大部分における操業中の排出濃度については、本当に法の基準値以下であるかどうかは分かりません。
 オーストリアやドイツなどでは、2週間ないし4週間単位での排ガスの収集と、それに基づくダイオキシン類の測定装置を行っており、これを繰り返すことで、1年を通してのダイオキシン類の監視が可能となっています。
 我が国でも、このような装置が導入されれば、管理の不十分な焼却場については、点検し、必要な修理を行ってより安全な操業を維持することができるはずです。
 被告は、JIS規格で認められていないことを論拠としてなかなか設置しようとしませんが、原告らは、これらの装置がJIS規格で認められるよう運動を継続していくこと、今後も焼却場の操業状況を監視していくことを前提として、さらなる運動の発展のために和解することとしました。
 今後も、安全な環境の確保、資源を大事にする社会の実現に向けて取り組んでいく所存ですので、よろしくお願いいたします。

(弁護士武藤糾明)

2 焼却場及び本件焼却場の問題点

 玄界清掃組合(旧古賀市外1市4町塵芥処理組合)が、古賀市筵内地区に1日260トンの焼却能力を持つ大型焼却場を操業している。

 厚生労働省は、WHO基準に準じたダイオキシン類排出基準を遵守する大型焼却場を全国にくまなく建設する予定を立てている。本件焼却場の建設も、このような国の政策の一環である。

 これは、一見すると、ダイオキシン類の低減のための政策であって「環境に優しい」政策のようであるが、そうではない。

 世界中のごみ焼却施設の約70パーセントが日本に集中している(1997年時点)という現実があるが、この割合は、日本中の米軍基地のうちの沖縄に集中している割合とそう変わらない。

 ごみを燃やすとダイオキシンが発生するということは常識であり、焼却施設の技術改良によっては、それを少なくすることができるにすぎない。焼却を避ける方法があれば、その方がダイオキシンを全く発生させない点で優れている。

 ごみ先進国であるドイツでは、かつて、プラスチックはおろか、紙類も一切焼却を認めていないという原則を打ち出した。燃やせばごみになるが、再利用すれば資源になるからである。

 日本では、それが資源か、資源ではないかという観点からの分別ではなく、燃えるか、燃えないかという観点からの分別を行い、「燃えるものは燃やす。燃えないものは埋める。」という方法をとってきた。現在でも、基本的な政策は転換されておらず、「燃やすと危険な、大事な資源」をせっせと燃やし続けるという政策を続けている。

 問題の本質に迫らず、小手先の技術論で問題を覆い隠し、既存の業者を保護する厚生労働省の姑息な政策を止めないと、子々孫々まで、ダイオキシンの被害を受ける危険がある。 住民は、施設の安全性、立地選定の不合理性などを問題として建設に反対している。2001年2月に建設操業差止めを求める仮処分を申し立て、その後、2002年3月に同じ内容の本訴を提起し、現在継続している。

 実際の操業においても、事前の計画では、年に数回しか行われないはずの立ち上げ、立ち下げが、2週間以内に繰り返されるなど、不安定な操業状況が認められていた。