川崎町産廃処分場差止事件

 福岡地方裁判所田川支部は、1998年3月26日、福岡県田川郡川崎町大ヶ原地区に建設が予定されていた安定型処分場の建設、使用、操業を禁止する決定を出した(保全異議審でも、2002年3月29日に認可決定)。

 さらに、福岡地方裁判所飯塚支部は、2004年2月18日、同じ内容の判決を言い渡した。

 これらの判断は、いずれも水源地に建設される産業廃棄物安定型最終処分場による地下水汚染の高度の蓋然性を認め、住民の安全な飲料水、生活用水を確保する権利を守ったものと評価できる。

 ごみ問題については、厚生労働省は、処分場を完全に安全な施設であるとしてその立地条件に規制を加えてこなかった。しかしながら、現在の最新の科学を用いても、有害物質が漏れ出すことが避けられないことが明らかとなっている。環境汚染が生じ、地域に健康被害が生じるという事実を前提に、処分場の立地規制、間違っても水源地に設置させないという政策をとる必要がある。

 反対運動を、「地域エゴ・住民エゴ」とする報道も見られるが、安全な水を飲み、健康を守る権利は、誰にも侵されない権利であることを、裁判所は一貫して認めているものである。

 水源地に危険な処分場を建て続けるという、国際的に見て非常識きわまりない日本のごみ行政をかえ、そもそも可能な限り廃棄物が生じないような資源循環型の生産、消費システムを確立することにより、住民の健康や自然環境を保全していく運動の一環として、本件訴訟は重要な意義を有している。

 現在は、地裁判決の控訴審に移行している。

(弁護士武藤糾明)