* 札幌地裁が和解案を示す(2011.1.11)

 2011年1月11日16:50から、札幌地方裁判所で、B型肝炎訴訟の和解期日が開かれました。
 裁判所は、「B型肝炎訴訟の和解に向けての当裁判所の見解」を発して、和解所見の概要を説明し、被害者認定基準や和解内容等を論点に沿って詳細に示す、11ページからなる基本合意書(案)およびその説明文書(6ページ)を示しました。
 裁判所の提案は、原告らの求めてきた和解条件からすれば十分とはいえませんが、集団予防接種を受けたことの証明方法として、母子手帳や予防接種台帳等にこだわらず、陳述書等によるものを認め、被害者を広く救済する方針を明らかにしました。
 和解金額についても、以下の通り示し、被告の提案(括弧書き)を引き上げました。
死亡、肝ガンまたは肝硬変(重度):3600万円(国2500万円)
肝硬変(軽度):2500万円(国1000万円)
慢性肝炎:1250万円(国500万円)
無症候性キャリア:50万円(国0円)
 また、まだ肝炎を発症していないキャリアの方に対しても、国が提案していた検査費用等以外に、十分とはいえませんが、一時金と検査通院ごとの交通費等の支払いを国に求めるなど、キャリア被害者の負担を軽減する内容になっています。
 今後、1月15日、16日に全国各地の原告団で対応を協議し(九州では、1月16日)、1月22日に東京で全国原告団会議を開き、原告団の方針を決めることになります。
以下、記者会見での発言です。
谷口三枝子全国原告団代表:はじめて所見を体験しました。私が思っていたより、中身が詳細に示されるものだなあと思いました。もっと厳しい内容が出ると思っていました。想像よりは原告の思いに沿った和解案が出されたと思います。しかし、複雑な思いもあります。不満なのは、キャリアの問題です。正直言って、キャリアの人の心情、被害を思うと、もうちょっと何とかならないかな、という思いがあります。うまくいえないんですけれども、喜びもできない複雑な状況です。九州原告団総会、全国原告団総会で、内容を十分検討したい。
高橋元一北海道訴訟副代表:高橋代表が発熱して出席できない、出席する気力も衰えてきたという連絡がありました。そういう状態の重い人がいるので、何とか早く解決したいという思いがある。個人的には、肝硬変という病気の中に重度・軽度と分けるのはどうかなと思っています。病気の重い人がいる中で、早く解決しなきゃダメだという気持ちもあります。近いうちに総会を開いて、対応を決めることになると思います。
 清本太一北海道訴訟副代表:医師から肝硬変だと言われ絶望的な気持ちとなり、裁判と一緒に闘病生活が始まった。18歳で学校に献血バスが来たときにキャリアと分かった。検査費だけで救済することは無理だと思ったので、交通費を支給すると言うことで、発症を防ぐためには効果のある案だと思いました。肝炎検査を受けてほしいという思いがあり、その都度状態を評価してもらう必要がある。しかし、裁判所からではなく、国から政策の内容として出してほしかった。救済範囲を広くとらえるという姿勢で和解の席に着いた以上、もう少し考えてほしかった。
 岡田京子東京原告団代表:この所見の内容では不十分ですが、十分検討しうる案だと思います。昨年の5月に和解協議が始まり、今日まで8ヶ月、とても長い間かかり、その間中身のある協議がなかったのは残念ですが、裁判所や国に被害を訴え続けてきた全国の原告団・支援者の活動で出たという思いもあって、複雑な思いです。無症候性キャリアの人に対して政策対応として出されていますが、これが無症候性キャリアに限定されていることが少し残念です。この政策対応が、今後の恒久対策につながるものとして、一つの取りかかりだと認識しています。ここからさらに、ほかの患者さんも本当に心配せずに医療を受けられるような状況につなげていける取りかかりとして今後の私たちの訴えや活動が必要になると思います。
 山本重康広島原告団代表:最近の厳しい寒さで、私の身も心も凍てついていましたけれども、本日の裁判所の所見を拝見しましたところ、凍てついた心が解けていくような思いがしました。ただし、キャリアの面など不十分な面もあります。広島に帰って総会でしっかり議論して判断したいと思います。いずれにせよ、裁判所から和解案を出していただいたことに感謝したいと思います。報道関係者の方々に報道していただいたことがこの和解案につながったと思います。ありがとうございました。
 佐藤哲之全国弁護団長:それぞれに温度差がある内容であることは、原告の皆さんの発言で分かると思います。それなりに、裁判所の見識も示された内容だろうと思います。一番の問題は、キャリアに対する対応をどうするか、ということでした。除斥が双方に隔たりが大きい問題でした。形式的な賠償と言うことではなく、総合的な対応としてどうするかということだとして臨んできました。50万円と言うところだけふれられているけれども、検査費用と、検査ごとに1万5000円ずつ、年間2回までの支給があることを考えると、25年とか30年のスパンで考えると、キャリア原告の年間の負担の軽減を考えると、200万円から250万円の中身を持ったものになるのではないか。検査に行くときの仕事を休む負担などを裁判所が所見で提案したことは、発症防止、定期的に検査を続けていくことにつながるものであり、これからよく検討していきたい。和解対象者を定める要件の問題などありますが、被害者を全員救済する方向で検討できる枠組みを示されたと考えていいのではないか。100点満点の中身ではないので、原告団が各地で意見を集約していく。最高裁判決で明らかにされた国の責任に基づいた所見であり、国には、より充実した中身での和解の政治決断を求めたい。

Q:除斥期間について、認めたのか否定したのか、間をとったのか。
佐藤B:除斥の問題を横に置いて、実質的にどうすればよいのか、と考えてきた。そういう内容だと思う。内容で判断したい。
Q:キャリアは発症者と大きく水準が異なるが、それは除斥が理由ではないか。
佐藤B:国が除斥の問題にこだわっていると言うことが解決の水準に反映しているとは思う。
Q:キャリアの救済内容について、十分な内容とはいえないとあるが、その理由は何か。佐藤B:最高裁判決があって、キャリア原告の被害に対して500万円の慰謝料を持って償うべきだと言った。それとの比較で言うと、その水準になっていないので、十分ではない。
Q:発症後の方々の和解金額の評価はどうか。
佐藤B:金額の問題については、薬害の救済法の水準を前提として検討されるべきであると主張してきましたから、100%ではありません。しかし、検討できる内容ではある。
Q:接種を受けた証明は、家族・本人・親族の陳述書でよいという理解でよいか。個別判断は裁判所の判断を尊重するというのはそういう意味か。
佐藤B:そう理解している。ここで除外することはあってはならない。

基本合意1周年チラシ
全国のB型肝炎電話相談窓口
相談票(記入後、そのままFAXして下さい)
記者会見の様子
社民党ヒアリング
公明党ヒアリング
自民党田村議員のあいさつ
民主党三宅議員のあいさつ
共産党田村議員のあいさつ
みんなの党小野議員のあいさつ
旗だしの様子
会見の様子
記者会見の様子
谷口全国原告団代表のあいさつ
高橋北海道原告代表のあいさつ
基本合意書の調印
細川厚生労働大臣の謝罪
調印式全景
菅首相の謝罪
谷口原告代表のあいさつ
菅首相と谷口代表の握手
増税論について
原告団・弁護団声明
門前集会
記者会見
記者会見
谷口原告団代表のあいさつ
門前集会
記者会見