* B型肝炎特措法に関する声明(2011.12.9)

2011年12月9日
「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」
の成立にあたって(声明)  
                        全国B型肝炎訴訟原告団
                        全国B型肝炎訴訟弁護団

1 本日「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」(以下「特措法」と言う。)が成立した。
  本特措法は、平成23年6月28日に原告団・弁護団と国(厚生労働大臣)との間で締結された基本合意を敷衍し、集団予防接種等の注射器の連続使用によるB型肝炎ウイルスの感染被害が未曾有のものであることに鑑み、この感染被害の迅速かつ全体的な解決を図る目的で制定されたものである。しかし、発症後20年以上経過した被害者に対する給付の内容が20年未経過の被害者と大きく差が設けられており、私たちは、この点について、差のない救済の実現のため法案の修正を求めてきた。
  すなわち、法案では慢性肝炎発症後20年経過被害者の給付金は20年未経過被害者の4分の1以下とされ、肝硬変・肝がん発症後(死亡の場合は死亡後)20年を経過した被害者には給付金を支給しない内容となっていた。私たちは、基本合意の時点においては、重篤者の早期救済の観点から苦渋の選択として発症後20年経過者について差のある合意案を受け入れたが、長く苦しんだ被害者こそ厚く救済されるべきであり、立法の段階では、除斥の壁を克服した救済が実現されることを求めてきた。基本合意に基づく和解を主宰した札幌地方裁判所の裁判長も、「除斥」の問題について「立法措置の際には改めて国会その他の場所で討議」し、「より良い解決を」すべきであるとの異例の所感を示したところである。
 しかし、特措法は、この点の修正がなされずに成立した。極めて残念であると言わなければならない。
2 他方、国会審議を通じて、次の点が明らかにされた。
 小宮山厚労大臣は、本特措法は基本合意の内容を立法化するもので、被害者救済の第一歩であり、今後、より良いものにしていく考えであることを繰り返し答弁した。そして、除斥期間経過の肝硬変、肝がん、死亡被害者については、これら被害者が今後裁判所に提訴した場合、「基本合意の趣旨を踏まえて、裁判所の仲介のもと誠実に対応」するとの国の方針が明らかにされた。衆議院及び参議院において同旨の附帯決議もなされた。さらに、「除斥期間経過被害者」全体に対する「真摯な対応」を行うことも附帯決議に盛り込まれた。
このように、本特措法は、除斥期間経過の被害者を切り捨てるものではなく、差別を固定化するものでもないことが確認された。私たちは、除斥期間経過の被害者に対して、今後とも、十全な救済を実現していくことを求めるものである。
3 本特措法により、集団予防接種等の注射器の連続使用によるB型肝炎ウイルス感染者が数十万人に及ぶことを前提に、そのすべての被害者が救済されるべきこと、そして、その救済の手続き及び救済のために必要な財源を確保すべきことが法的に確認された。
また、国会審議において、適正かつ迅速な和解手続実現のための十分な体制の整備が必要であること、今回成立した救済手続きの国民への周知徹底が必要であることも明らかにされた。
4 さらに、今後の恒久対策の実現に関して、小宮山厚労大臣は「恒久対策の検討に当たりましては、B型肝炎患者の原告も含めた患者やご遺族のご意見も踏まえながら、これは誠実に取り組んでいきたいと考えています。」と答弁した。
 附帯決議においても、「差別・偏見をなくすための国民への広報・啓蒙」、「注射器の連続使用を含む様々な感染可能性を明示した上での肝炎ウイルス検査の勧奨、肝炎医療の提供体制の整備、肝炎医療に係る研究の推進、医療費助成等、全ての肝炎ウイルス感染者に対し、必要な恒久対策を引き続き講ずるよう努めるとともに、とりわけ肝硬変・肝がん患者に対する医療費助成を含む支援の在り方について検討を進める」等として恒久対策の充実が求められた。
 私たちは、国に対し、この答弁、附帯決議に基づき、すべての被害者がもれなく適正な救済が受けられることを旨とした恒久対策の具体化を求めるものである。
5 私たちは、特措法の成立が、まさに、B型肝炎患者救済の第一歩であり、今後これをより良いものとするよう努力していく決意である。
  私たちは、今後とも除斥差別のない解決を求めるとともに、本制度で救済されない被害者、ひいてはすべてのウイルス性肝炎患者の救済を求めて活動していくことを改めて宣言するものである。
以上

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