* 32名和解も、和解遅延改善せず(2012.6.20)

 2012年6月20日11:00から、福岡地方裁判所で、B型肝炎九州訴訟の口頭弁論期日と和解期日が開かれました。
 原告番号168番さんは、機械メーカーで、長年専門性の高い仕事に従事してこられました。しかし、平成21年には肝ガンを発症しました。
 ラジオ波焼灼術を終えると、体力が落ち、朝早くから夜遅くまで働き続けるというスタイルが困難になりました。いったん退職して、嘱託となりました。それでも、家族から長生きするために仕事を辞めてほしいといわれ、退職する予定です。成熟した管理者として仕事をする夢が断たれました。
 本日、和解が成立しましたが、注射器の使い回しという責任の所在を明確にして、きちんとした救済措置を、迅速に実行してほしいと訴えました。
 原告番号38番さんは、建設会社の営業部門を統括しています。
 平成19年に5センチメートルの肝ガンを発症しました。
 退院後は、3ヶ月ごとにエコー検査を受けていますが、エコーを動かす医師の手がぴたっと止まり、「しまえた(終わった)」と背筋が凍り付いたことは一度や二度ではありません。3回、肝ガンが再発しており、そのたびにラジオ波焼灼術を受けています。
 従業員とその家族200人以上の生活が自分の肩に掛かっているという責任感で仕事を続けていますが、帰宅したら倒れ込むような生活です。
 息子のために福祉施設を作る夢もありましたが、ガンの治療に時間や気力を奪われ、もう達成できそうにありません。
 提訴して4年たちますが、まだ和解できません。肝ガン患者にとって絶望的に長い時間であり、生きているうちに和解を成立させてほしいと訴えました。
 小宮弁護団代表は、原告が和解資料を提出しても、国のチェック結果が戻るのに5ヶ月かかっている現状から、肝ガン患者など重篤な被害者が生きているうちに和解を成立させるよう求めた札幌地裁の裁判長の思いや、原告らの思いを踏みにじるものだと国の姿勢を批判しました。月に300件のチェックをする体制を整えるといっても、国が見積もる40万人の被害者を救済するのには100年でも足りないと指摘しました。
 国は、迅速な救済ではなく、不必要なあら探しのために多大な時間と労力を費やしていると厳しく批判しました。
 本日、32名の原告(被害者数31名)の和解が成立しました。
国は、「今年2月中に資料を提出された方には、6月中に回答したい。3月、4月に提出された方には、7月中に回答したい。」と説明しましたが、弁護団は、「普通の裁判でも、原告の提出した資料の検討は1ヶ月程度しか認められていない。国が加害者であるという枠組みの中で、提出する資料も定型化しており、普通のペースより遅い状態でよいはずがない。3ヶ月待ちに改善するなどといわれても全く不十分だ。」と、資料検討体制の抜本的改善を求めました。

<被害者31名の内訳>
キャリア     50万円  6名
慢性肝炎   1250万円 12名
肝硬変(軽度)2500万円  5名
肝ガン    3600万円  6名
死亡     3600万円  2名
<九州訴訟和解者の現在数>
本日の和解により、福岡地裁44名→76名(原告数。被害者数では75名)、九州50名→82名(原告数。被害者数では81名)に。
福岡の和解者内訳:キャリア6名、慢性肝炎44名、肝硬変(軽度)9名、肝がん14名、死亡2名
<九州訴訟原告数:2012.6.20>
九州 627名(被害者573名)。うち、福岡地裁 560名(被害者507名)、熊本地裁25名(被害者24名)、鹿児島地裁30名、那覇地裁12名
<全国の原告数・和解数:2012.6.20全国弁護団集計分>
2012.5.31時点で原告4336名、6.19時点で4496名
5.31時点で和解原告371名、6.19時点で和解原告数415名