最高裁の不当決定

*最高裁の不当決定が出されました。
 2006年1月30日、最高裁判所第3小法廷は、大崎再審事件の特別抗告を棄却しました。以下、弁護団声明です。

1 本日,最高裁判所は原口アヤ子さんの再審請求を棄却する決定をしました。
 この決定は無実の者を救済するために設けられた再審制度の門を永久に閉ざすことになりかねない,極めて不当なものです。

2 そもそも,本件の確定判決は,死因に関する客観的な証拠を十分に検討せず,不合理不自然な「共犯者」らの自白を鵜呑みにして安易に下された有罪判決でした。弁護団は再審請求において,被害者の死体には確定判決が認定した死因と矛盾する所見があることや,事故死の可能性があることを指摘した法医学鑑定等の新証拠を提出し、鹿児島地方裁判所はこれを受けて確定判決の事実認定には重大な疑問があるとして,再審開始を決定しました。

3 ところが,福岡高等裁判所宮崎支部は,これまでの再審判例が作り上げてきた理論をねじ曲げ,新証拠である法医学鑑定書を読み違え、その証拠価値を正当に理解せず,再審を開始した鹿児島地裁の決定を取り消しました。

4 弁護団はこの不当な高裁決定の取消を求め,最高裁判所に特別抗告しましたが,最高裁は弁護団が特別抗告理由補充書を提出してからわずか5ヶ月足らずで6行の理由を付して決定を下しました。高裁決定の犯した数々の判例違反や証拠の評価の誤りを吟味したとは思えませんし,本件のこれまでの膨大な記録をつぶさに検討した結果の判断とは到底思えません。

5 現在,裁判員制度の導入を始めとする司法制度改革が進められようとしています。「市民に開かれた裁判を」をキャッチフレーズに,裁判所も積極的な広報活動を展開しています。しかし,今回の最高裁決定は,市民の感覚とあまりにもかけ離れています。
  原口さんは,捜査段階から一貫して本件犯行を否認し,判決確定後は,刑務官から「罪を認めれば仮釈放」と言われてもこれを拒否して満期服役し,出所後もえん罪を晴らすため,今日に至るまで戦ってきました。その原口さんもまもなく80歳に手が届こうとしています。「共犯者」とされた3名の方々は無念のうちにこの世を去りました。彼らの長年にわたる筆舌に尽くしがたい苦しみは,まさに今,改革が叫ばれている「司法」に携わる者の過ちによってもたらされたのです。
  裁判所が自らの過ちを正すことができないようでは,制度だけを変えても何の意味もありません。無実の者の声に耳を傾けず,人権の救済というその崇高な使命を放棄した今回の最高裁決定に対し,私たちは断固として抗議します。

6 最後に,本件再審請求について,多くの方々の暖かいご支援をいただいたことに深く感謝し,今後ともご指導,ご支援をお願いする次第であります。

             2006年2月1日
             大崎事件再審請求弁護団  団長  亀 田 徳一郎
                                      弁護団一同

(弁護士武藤糾明)